第一章：信頼の海に浮かぶ疑念
一年前の三月、横浜の海上で彼からプロポーズを受けた。私たちは二十年来の知り合いで、交際を始めてからは一年が経っていた。彼は消防士という職業に就いており、その責任感と誠実さに惹かれていた。長い付き合いの中で築かれた信頼感は、他の誰よりも深いものだと感じていた。
彼には二人の子供がいて、彼の希望は私に子育てを任せたいというものだった。私は子供が好きで、自分の家族が増えることに幸せを感じていた。しかし、私の仕事の都合で結婚は一年間延期されることになった。
引っ越しの話が出たとき、彼は一度も手伝いに来てくれなかった。また、私の住む街に来たことも、送ってくれたこともなかった。今思えば、少しおかしいと感じることがいくつかあった。
この経験を通じて、長い付き合いの中でも見えていなかった一面に気づくことができた。信頼関係を築くには、時間だけでなく、行動や思いやりも必要だと実感した。